全体食(53ページ)
どんな生物でも、その体全体をひっくるめてみれば完全な調和が保たれている。例えば、植物体の花、葉、根の部分には、それぞれ異なった成分が偏在しているけれども、それは無意味な諸成分が勝手気ままに散らばっているのではない。これら各部分に散在する諸成分は、互いに相関関係をもっており、また相補的である。一般にいって植物の葉は、われわれの体を冷やすような働きをもっているが、その反対に根には温める作用がある。葉と根を一緒に食べることによって、はじめて調和がとれることになる。我々が全体食をすすめる理由はそこにある。
動物を食べる場合においても、事情は全く同じである。ツノからヒヅメに至るまで、内臓もろとも食べるというのであれば、それは全体食になるだろう。肉(筋肉)だけ食べるのは部分食であるから感心しない。魚の場合でも、サシミはよくない。部分食になるからだ。むしろ、メザシやジャコのような、体全体が食べられるものこそ、理想的な食品といえよう。
ガンは全身病である(105-106ページ)
体のどこかに、ガンと呼ばれる腫瘍ができるために、その人の全身状態は小康を保っているのである。腫瘍ができなければ、急転直下、その人の寿命は尽き果ててしまうことだろう。容体が急激に悪化するのを避けるために、腫瘍(ガン)ができ、寿命を生き永らえさせているのである。だから、われわれはガンというおでき――つまり安全弁――に対して、感謝しなければならないのだ。現代医学がガンを治せないでいるのは、「ガン征圧」「ガン撲滅」などといって、この安全弁でもある腫瘍を破壊する治療法がとられているからである。現行の外科療法も化学療法もそして放射線療法もみんなそうである。
ガンに感謝しよう、ガンと仲良くしよう(106ページ)
“ガンに感謝しよう、ガンと仲良くしよう”という考え方が生まれてこない限りガンは治せないだろう。ガンが人類最後の仇敵とは飛んでもない大錯誤である。
・・・ガンを治していくためには、いま述べたような心構えをもちながら、積極的に血をきれにしていく方法つまり浄血法を試みていかねばならない。それが治療の眼目である。そのためには、食事の量はできるだけ控え目に、そして食物の質は植物性に切り換える必要がある。そういう意味からいっても、ガン患者に肉食をさせるのは不合理であるし、実際、逆の効果を招く。それはちょうどガン細胞にコヤシをやるようなものだ。
夏バテは血液の稀薄化(110ページ)
夏バテ防止法は、できるだけこの血液の稀薄化を食い止めることにある。具体的には、水分の取り方を制限すること、および大いに体を動かし発汗させることである。
十分な運動と熟睡(111ページ)
どうしても眠れない場合には、レモンとハチミツを加えた上質のワインを、適量飲んでみるのも一つの方法であろう。レモンのクエン酸やビタミンC、ハチミツに含まれるビタミンやミネラルなどが疲れをとり、ワインが全身の血液循環をよくするので、グッスリ休めるというわけである。
人間は草食動物である(119ページ)
人間は、明らかに、穀菜食の植物性食品をとる動物として地球上に登場した。その証拠は、われわれ人間の消化器官に歴然として取り残されている。試みに、口を開けて、並んでいる歯の格好をのぞいみよう。
まず眼につくのは門歯であるが、それはノミのような恰好をしていて、果物をカジるのに適している、その隣が犬歯で、一応、肉食用の歯とされているが、しかし、類人猿のように完全草食に近い動物でも、この犬歯が著しく発達しているところをみると、それは互いに噛みつき合うためのものかも知れない。その奥にある小臼歯および大臼歯は、草の繊維や穀物を噛み砕くための歯である。したがって、われわれの歯は草食(穀物も含めて)用だといえよう。
腸の長さも、肉食動物よりはかなり長く――とはいっても、雑食のせいで、草食動物よりはやや短くなっているが――まず草食動物並みだ。しかも、草食動物では大いに活用されている虫様突起(いわゆる盲腸)付きである。草食動物が虫様突起に炎症をおこして手術を受ける――ナンテことは絶対にない。人間が虫様突起炎をおこすのは、要するに草を食わなくなったからでもある。また、われわれの体内においては、植物性の澱粉なら、まず問題なくこれを血肉とすることができる。たとえ腐敗したものであっても、植物性のものならば、命に別条なく処理されるが、肉だとそううまくいかない。